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別表A(1)の第一段階の作成上の留意点~公益法人

公認会計士・税理士 森 智幸

KEY POINTS

  • 別表A(1)(収益事業等の利益額の50%を繰入れる場合)は収支相償を計算する表であり、極めて重要である。
  • 従って、別表A(1)は丁寧に作成する必要があるが、誤りやすい点が多いので注意が必要である。
  • 第1段階では、剰余金の解消手段として資産取得資金は使用できないので、剰余金解消計画を作成するときは注意する必要がある。

1.はじめに

 公益社団法人及び公益財団法人(以下「公益法人」)は、毎事業年度の経過後3ヶ月以内に事業報告等に係る提出書類を行政庁に提出しなければなりません(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)27条)。

 今回は、この書類のうち、「別紙4」の中の「別表 A(1) 」について作成上の留意点を記載したいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.別表A(1)の留意点

 別表A(1) は収益事業等の利益額の 50%を繰り入れる場合に、収支相償(認定法14条)を計算する表です。 

 収支相償は公益法人の財務3基準の1つですが、収支相償は一定期間満たすことができないと、認定法27条に基づく報告徴収の対象となりうるので注意が必要です。

 以下に、第1段階における作成上の留意点を表にまとめましたので参考にしていただけますと幸いです。

 以下、文章で作成上の留意点を簡単に記載します。

(1)経常収益と経常費用を記載

 2欄は、公益目的事業会計の経常収益計と経常費用計を記載します。経常外収益と経常外費用は含みませんので注意が必要です。

 前職で他のスタッフの計算チェックをしていると、2欄に経常外収益と経常外費用を含めて記載しているケースが散見されましたが、これはA(3)の収益事業等の利益から公益目的事業財産への繰入額の計算では経常外収益と経常外費用を合計して計算するので、A(3)に引きずられてしまっていることが原因です。A(1)とA(3)では集計範囲が異なりますので注意が必要です。

 なお、内部取引高がある場合は、内部取引高を控除して記載しますので、この点も注意が必要です。

(2)前年度に剰余金がある場合

 2欄の記載のもう一つの注意点は、前年度に剰余金が発生していた場合は、その剰余金を加算するという点です。

 個人的には、この2欄の左側に前年度の6欄の金額を記載する列があれば誤りが減るのではないかと思っていますが、現状は2欄に自分で加算する方式となっています。

 従って、必ず、前事業年度の別表A(1)を確かめて記載する必要があります。

(3)資産取得資金は使用できない

 6欄がプラスの場合は、発生理由とこれを解消するための計画等を記載する必要があります。

 このうち、解消するための計画等ですが、第1段階では解消手段として資産取得資金は使用できないので注意が必要です。

 すなわち、第1段階では、剰余金を解消するための計画等としては、翌事業年度において公益事業を拡大して剰余金を解消する、あるいは特定費用準備資金を積立てて解消するということになります。

 従って、例えば「公益目的財産として◯◯を取得するために、資産取得資金△△円を積立てる予定です。」といった記載及び計画は認められませんので、事業計画や収支予算書を策定されるときはご留意ください。

(4)剰余金解消計画の実績等を記載した書類の添付

 前事業年度の6欄にプラスの事業がある場合は、前事業年度のA(1)で記載した剰余金解消計画について、その実績と具体的な資金使途を説明した書類を添付する必要があります。

(5)特定費用準備資金の取崩額の記載

 特定費用準備資金を積立てた場合は、取崩を行ったときは4欄にその取崩額を記載する必要があります。この取崩額は記載を忘れやすいので注意が必要です。現行のシステム(マクロが入ったエクセル)では、第2段階は別表C(5)から積立額と取崩額が自動転記されますが、第1段階では自分で記載する必要があります。

 もう1つの注意点は、記載上の注意点ではありませんが、この取崩額を記載したら、6欄がプラスになってしまったということがないよう、決算見込みを行うときに十分注意する必要があるという点です。

 事業報告等に係る提出書類を作成する段階では、期末を過ぎてしまっていますので、別表A(1)を作成している段階で6欄に剰余金が生じることが発覚してしまうと、この時期に剰余金解消計画を策定しなければなりません。

 しかしながら、すでに事業計画書と収支予算書を提出した後に、剰余金解消計画を策定するのは難しい面があります。

3.まとめ

 別表A(1)は収支相償の計算を行う表なので、とても重要です。

 私の経験上、財務3基準のうち、行政庁の対応は収支相償に係るものが最も厳しいという印象です。従って、別表A(1)は丁寧に作成する必要があります。

 以上、参考としていただけましたら幸いです。

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

 令和元年に独立開業。株式会社や公益法人のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

 PwCあらた有限責任監査法人リスク・デジタル・アシュアランス部門ではアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

 これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、公益法人コンサルティング、J-SOX支援、内部統制構築支援、社会福祉法人監査などに携わる。執筆及びセミナーも多数。