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公益法人における利益相反取引の留意点

KEY POINTS

  • 利益相反取引は、法人の利益を害する恐れがあるため、法において事前と事後の手続きが定められている。
  • 理事会での承認は取引の前に行われることが望ましい。
  • 重要な事実の開示や事後報告を怠った場合、過料に処せられる可能性があるため注意が必要である。

1.はじめに

 一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人(以下「公益法人」)は、利益相反取引が行われる場合、一定の手続が必要です。

 利益相反取引とは法人と理事との間で利益が相反することとなる取引を指しますが、このような取引は理事が法人の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図るおそれが大きいため、法令において一定の規制が設けられています。

 今回は公益法人の利益相反取引の規制内容について説明します。

 なお本稿は私見であることにご留意ください。

2.利益相反取引の例

 利益相反取引の例としては、理事が代表取締役をつとめる株式会社と公益法人との取引があげられます。公益法人がその会社から物品を購入するという場合もあれば、その会社が運営するホテルや飲食店を会議や懇親会で使用するという場合もあります。

 

 また、外郭団体系の公益法人における都道府県や市町村との委託取引についても注意が必要です。

 『公益法人・一般法人によくある質問』公益財団法人公益法人協会)の質問313(P385)によれば、代表理事が市の部長級職員であるとき、公益法人がその市から業務を委託され契約する場合においても、「理事会承認をしておくほうが、堅実な運営です。」とされています。これは、契約の相手方はその法人の理事ではない市長であるものの、その代表理事が市の職員として、市のために不当に廉価な取引を強いるという可能性がありうるためということです。

3.利益相反取引を行う場合の手続

 ほとんどの法人が理事会設置法人ですので、理事会設置法人を前提に記載します。

(1)理事会での承認

①承認の時期

 理事と法人との間で利益相反取引が行われる場合は、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)84条①柱書、同条同項ⅱ・ⅲ、92条①、197条)。

  承認の時期ですが、会社法における判例では「事後の承認でもよい」というものもありますが(東京高判昭34・3・30)、事前の承認が望ましいといえます。

 なぜかというと、取引を行う前に取引内容などの事実を開示させることが、その理事に対する牽制となるためです。これにより、法人に対して生じるかもしれない損害を未然に防ぐことができます。

②開示する重要な事実とは

 利益相反取引においては、「どのような事項を理事会で開示すればよいのか」というご質問をよく受けます。

 この「重要な事実」については法令に具体的な記載はありませんが、例えば、取引の内容、取引理由、取引先名、取引予定日、金額の総額、個数、単価、支払予定日といった事項を開示するということが考えられます。

③当事者となる理事の決議の参加の可否

 利益相反取引の当事者となる理事は、利益相反取引の承認にかかる決議について特別の利害関係を有する理事に該当するため、議決に加わることができません(一般法95条②)。

 

 また、理事会の議事録には、決議を要する事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、当該理事の氏名を記載する必要があります(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則15条③ⅳ)。

(2)事後報告

 利益相反取引をした理事は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければなりません(一般法92条②)。

(3)罰則

 理事会において重要な事実の開示を怠った場合は100万円以下の過料に処せられます(一般法342条ⅲ、ⅵ)。

 また、事後報告を怠った場合も100万円以下の過料に処せられます(一般法342条xiv)。 

4.おわりに

 利益相反取引は、法人に損害を生じさせるおそれがあります。

 従って、普段の取引においても理事が代表取締役をつとめる会社との取引などにおいては、利益相反取引の可能性がないかどうかをチェックする必要があります。