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Web会議等を行ったときの議事録作成上の注意点~公益法人・一般法人

公認会計士・税理士  森 智幸

KEY POINTS

  • 理事会や評議員会をWeb会議等で行うことは、一定の要件を満たせば可能である。
  • ただし、法令上、Web会議等により開催した場合は、議事録に出席方法を記載する必要があるので注意が必要である。
  • また、法令に記載されていないが、利用したWeb会議等のシステムの名称や、音声や映像が相互に伝わっており意見表明が互いにできる環境であったことなども明記することが望まれる。

1.はじめに

 新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、理事会や評議員会をWeb会議、テレビ会議、電話会議等の方法で開催された公益法人は多いと思います。

 一定の要件を満たせば、公益法人の理事会や評議員会もWeb会議等で開催することは可能です。ただし、Web会議等で行った場合は、議事録の作成に注意が必要です。

 今回は、この議事録の作成上の注意点について説明します。

 なお、本稿では「公益法人」とは一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人のことを指すものとします。

 また、本稿は私見であることにご留意ください。

2.議事録作成上の注意点

 理事会や評議員会を開催した後は議事録を作成されていると思います。

 法令上も、議事録の作成義務が定められています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)95条③、193条①)。

 

 しかしながら、Web会議、テレビ会議、電話会議等の方法により、理事会や評議員会を開催した場合は、開催された日時及び場所を記載するときに、以下の記載も必要です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則15条③ⅰかっこ書き、60条③ⅰかっこ書き)。

  • 理事会の場合・・・当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席した場合における当該出席の方法
  • 評議員会の場合・・・当該場所に存しない理事、監事、会計監査人又は評議員が評議員会に出席した場合における当該出席の方法

 これらは、上記の通り、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則に定められていますので、これらの記載がない場合は法令に抵触することになるため注意が必要です。

3.議事録の作成例

 次に、実際に記載する場合の例を見てみたいと思います。

 まず、内閣府のFAQ問Ⅱ-6-②では、「例えば」として「Web会議システムを用いて理事会(評議員会)を開催した旨の記述や、Web会議システムにより、出席者の音声と映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっていることが確認されて、議案の審議に入った旨の記述をすることが考えられます。」とされています。

 

 次に、こちらは社会福祉法人の例ですが、松江市の様式集にWeb会議等を開催した場合の記載例がありましたので、これを参考にして記載してみます。

 なお、社会福祉法人においても、社会福祉法施行規則2条の15③ⅰかっこ書きと2条の17③ⅰかっこ書きに同様の規定が設けられています。(社会福祉法は公益法人の関連法をベースにして作成されていますので、同じ内容の規定が多く含まれています。)

 

 松江市の様式例2-3(理事会議事録)の書き方を参考にしますと、以下の記載方法が考えられます。なお、評議員会の場合も同様となります。

(1)出席者

(当該場所に存しない役員等の出席方法)

 A理事及びB理事は自宅より、Web会議システム(利用サービス名:Googleミート)を利用して参加

  

 松江市の記載例にもあるように、利用したWeb会議システムの名称は入れておくほうがよいと思います。

(2)議案の審議に入るとき

 

(理事会の議事の経過の要領及びその結果)

 理事長より、本日の理事会については、A理事及びB理事はWeb会議システムを利用して理事会に参加する旨の報告がなされ、当該Web会議システムが出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっており、出席者が一堂に会するのと同等の相互に十分な議論を行うことができる環境であることが出席者全員により確認された。

 

 

 ここのポイントはFAQ問Ⅱ-6-②にもあるように、「Web会議システムにより、出席者の音声と映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっていることが確認されて、議案の審議に入った」ことを明記することです。

 Web参加している理事の一部にリアル理事会からの音声が伝わらない、あるいは、Web参加している理事からの音声が伝わらない、チャットもできないとなると、Web参加している理事と相互に意思が伝わらないことなるため、理事会の適切な運営ができなくなります。

 そのため、上記のようにリアル理事会と同じレベルの環境のもとで理事会が行われたことを記録しておく必要があります。

(3)理事会終了時

 以上をもって、本日のWeb会議システムを用いた理事会は終始異常なく、議案の審議等は終了したため、議長は◯時◯分に閉会を宣言し、終了した。

 

 最後の締めの文章では、当日の理事会では、Web会議等のシステムに異常事態は発生せず、無事終了した旨を記載しておくのがよいと思います。

4.おわりに

 今回はWeb会議等により理事会や評議員会を開催した場合の議事録の記載上の注意点について記載しました。

 記載例は、あくまで松江市による様式例を参考にして作成したものなので、他にも色々な記載方法があると思います。

 今回の記事が実務の参考となりましたら幸いです。 

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

 令和元年に独立開業。株式会社や公益法人のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

 PwCあらた有限責任監査法人リスク・デジタル・アシュアランス部門ではアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

 これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、公益法人コンサルティング、J-SOX支援、内部統制構築支援、社会福祉法人監査などに携わる。執筆及びセミナーも多数。


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