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監事の監査報告の記載事項~公益法人・一般法人

公認会計士・税理士 森 智幸

KEY POINTS

  • 一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人の監事が作成する監事監査報告書の記載内容は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」において定められている。
  • そのため、監事監査報告書は、法令に定められた事項を正確かつ網羅的に記載しなければならない。これは、一般社団法人、一般財団法人でも同様である。
  • 内閣府からは監事監査報告書のひな形は公表されていないが、青森県による定期提出書類の作成例のほか、公益法人Information内にある資料などが参考となる。

1.はじめに

 一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人において、監事は、理事の職務の執行を監査しますが、この場合において、監事は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければなりません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)99条①、197条)。

 この監査報告は、「法務省令で定めるところにより」とされているように、記載事項は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(以下「施行規則」)で定められています。

 そのため、施行規則に記載されている事項を正確にもれなく記載する必要があります。

 

 そこで、今回は、監事の監査報告の記載事項について説明します。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.監査報告の記載事項

(1)概要

 監査報告は会計監査人が設置されていない法人と設置されている法人で一部内容が異なりますが、我が国の公益法人は多くが会計監査人が設置されていない法人なので、会計監査人が設置されていない法人に係る監査報告について説明します。

(2)法令上、記載が求められている事項

 監事は計算関係書類、事業報告及びその附属明細書を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする監査報告を作成しなければなりません(施行規則36条①②、45条、64条)。

  1. 監事の監査の方法及びその内容
  2. 計算関係書類が当該一般社団法人・一般財団法人の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見
  3. 監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由
  4. 追記情報(①正当な理由による会計方針の変更、②重要な偶発事象、③重要な後発事象
    及びその他の事項のうち、監事の判断に関して説明を付す必要がある事項又は計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項。)
  5. 監査報告を作成した日
  6. 事業報告及びその附属明細書が法令又は定款に従い当該一般社団法人・一般財団法人の状況を正しく示しているかどうかについての意見
  7. 当該一般社団法人・一般財団法人の理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったときは、その事実
  8. 監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由

 なお、上記一覧に「一般社団法人」、「一般財団法人」とありますが、公益社団法人は公益認定を受けた一般社団法人、公益財団法人は公益認定を受けた一般財団法人をいいますので(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第2条ⅰ、ⅱ)、公益社団法人、公益財団法人も含みます。

3.監査報告記載例~公益社団法人及び公益社団法人の場合

 以下に、公益社団法人及び公益財団法人の監査報告の記載例を掲載します。

 作成にあたっては、青森県環境生活部県民生活文化課による「事業報告等に係る提出書の作成例と注意事項」に記載されている監査報告の記載例に基づきました。

 一部、筆者が加筆しております。

 

 監査報告のその他の記載例については、内閣府の公益法人Informationに収められている「公益法人の監査」の中に掲載されているほか、公益財団法人公益法人協会様が情報公開として公開されている監査報告があります。

 

 なお、最初の区分の条文名および条文番号の記載は、記載がある方が監事監査の根拠条文を示しているので丁寧かと思いますが、法令上、記載が要求されているものではありませんので、記載がなくても問題はないと考えられます。

【記載例】公益社団法人、公益財団法人の場合

 私たち(※1)監事は、当法人の令和2年4月1日から令和3年3月31日までの令和2年度の理事の職務の執行について監査を行いましたので、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第99条第1項(※2)並びに公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第33条第2項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第36条及び第45条(※3)の規定に基づき本監査報告書を作成し、以下のとおり報告いたします。

 

1 監査の方法及びその内容

 私たち(※1)監事は、理事及び使用人等と意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めるとともに、理事会その他重要な会議に出席し、理事等からその職務の執行の状況について報告を受け、重要な決裁書類等を閲覧し、当法人の主たる事務所において業務及び財産の状況を調査しました。

 以上の方法によって、当該年度に係る事業報告及びその附属明細書を監査しました。

 さらに、会計帳簿又はこれに関する資料の調査を行い、当該年度に係る計算書類及びその附属明細書並びに財産目録等(※4)について監査しました。

 

2 監査の結果

(1)事業報告等の監査結果

 ①事業報告及びその附属明細書は、法令及び定款に従い、当協会の状況を正しく示しているものと認めます。

 ②理事の職務の執行に関する不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実は認められません。

(2)計算書類及びその附属明細書並びに財産目録等(※4)の監査結果

 計算書類及びその附属明細書並びに財産目録等(※4)は、当協会の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているものと認めます。 

(青森県環境生活部県民生活文化課による「事業報告等に係る提出書の作成例と注意事項」に基づいて作成(一部筆者加筆))

※1・・・監事が1名のときは「私監事は」となります。

※2・・・公益財団法人の場合は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第99条第1項」が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第197条において準用する同法第99条第1項」となります。

※3・・・公益財団法人の場合は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第36条及び第45条」が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第64条において準用する同規則第36条及び第45条」となります。

※4・・・キャッシュ・フロー計算書を作成していなければ「財産目録」となります。

 以上、参考としていただけますと幸いです。

森智幸

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

 令和元年に独立開業。株式会社や公益法人のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

 PwCあらた有限責任監査法人リスク・デジタル・アシュアランス部門ではアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

 これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、公益法人コンサルティング、J-SOX支援、内部統制構築支援、社会福祉法人監査などに携わる。執筆及びセミナーも多数。


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