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代表理事や理事長等による理事会での報告~公益法人・社会福祉法人

公認会計士・税理士 森 智幸

1.はじめに

 今年は新型コロナウイルス感染症の影響により、3月決算の一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人そして社会福祉法人では、理事会を決議の省略によって行われた法人も多いと思います。

 一方で、代表理事(公益法人の場合)や理事長(社会福祉法人の場合)等は自己の職務の執行の状況の報告をしなければなりませんが、今回はこの論点についての留意点を記載したいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.代表理事や理事長等による自己の職務の執行の状況の報告に係る留意点

 代表理事(公益法人の場合)または理事長(社会福祉法人の場合)、業務執行理事は3ヵ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならないとされています。ただし、定款で毎事業年度に4ヵ月を超える間隔で2回以上その報告をしなければならない旨を定めることもできます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」91条②)、197条、社会福祉法(以下「社福法」)45条の16③)。

 

 この自己の職務の執行の状況の報告は、決議の省略による場合はこの報告を行うことはできず、実際に理事会を開催して報告する必要があります(一般法98条②、197条、社福法45条の14⑨)。

 そのため、3月決算の法人で、今回5月または6月に、計算書類等の承認の理事会を決議の省略によって行った場合は、この自己の職務の執行の状況の報告は行われていませんので注意が必要です。

 

なお、多くの法人では、この容認規定を適用していると思いますので、これを前提に記載したいと思います。

3.定款で容認規定を定めている場合

 3月決算の法人の場合、このあと、どこかの月で理事会を4ヶ月を超える間隔で2回以上、実際に開催する必要があります。

 公益法人のうち3月決算の法人及び社会福祉法人は、3月に事業計画、収支予算の承認のための理事会を開催するところが多いので、もし、この時期に新型コロナウイルス感染症の影響がない場合は、この時期に理事会を開催することになると思います。

 そうなると、あと一回は、3月の理事会から逆算して4ヶ月を超える間隔をあけて行う必要があります。なお、これは4ヶ月に1回ではなく、間隔が4ヶ月となります。そうなると、候補としては例えば、10月や11月に理事会を実際に開催するということが考えられます。もちろん、7月、8月、9月でも問題はありません。

 しかしながら、夏になっても新型コロナウイルス感染症の影響が続く可能性があります。秋すぎに第2波、第3波が来る可能性もあります。

 このように、今年はかなり予測が困難な状況ですが、理事会を4ヶ月を超える間隔で2回以上開催する必要があるため、そのスケジュールは立てておく必要があります。

4.Web会議、テレビ会議、電話会議による開催

(1)集まることができない可能性

 とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くのかが全く予測できないので、今後、理事、監事が実際に集まって理事会を開催できるかどうかも目処が立ちません。

 しかしながら、法令は遵守する必要がありますので、なんとかしたいところです。 

 そこで、以前も記載しましたが、Web会議、テレビ会議、電話会議であっても一定の要件を満たせば、このような手段による理事会の開催も可能です。 

(2)公益法人~FAQの記載内容

 公益法人については内閣府の公益法人Information内のFAQにて、「FAQ問Ⅱ‐6‐②(Web会議・テレビ会議)」にその要件が記載されています。

 以下、引用します。

 

「Web会議、テレビ会議、電話会議などのように、出席者間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各出席者の音声や映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっており、出席者が一堂に会するのと同等の相互に充分な議論を行うことができるという環境であれば、Web会議、テレビ会議、電話会議などの方法で理事会や評議員会を開催することも許容されると考えられています。」(赤文字は筆者)

 

(3)社会福祉法人~事務連絡の記載内容

  また、社会福祉法人では令和2年3月9日に発出された厚生労働省の事務連絡「新型コロナウィルス感染症の発生に伴う社会福祉法人の運営に関する取扱いについて」にテレビ会議等に関する記載があります。

 

 

「ガイドラインで言う「テレビ会議等 」とは、 各理事の音声が即時に他の理事に伝わり、適時的確な意見表明ができるものであればよく、一般的な電話機のマイク及びスピーカー機能、インターネットを利用する手段などが含まれており、必ずしも会議室で 会議を行う必要はないことを 、法人に対して周知すること 。」(赤文字は筆者)

 

5.Web会議と電話を組み合わせた開催方法

 以前も記載しましたが、導入しやすいのは電話会議ではないかと思います。

 ただし、電話会議は電話の通信料が発生するので、このあたりがネックになるかもしれません。

 

 可能であれば、Web会議がよいのではないかと個人的には思っていますが、パソコン操作にあまり慣れていない方がいらっしゃらない方やパソコンをお持ちでない方がいらっしゃると難しいかもしれません。

 ただし、今からであれば、まだまだ十分な時間があるので、Web会議を開催できるよう、環境整備をしていくのもよいかもしれません。当事務所もGoogleのG-Suiteを導入して、Googleミートを使用する方針です。

 

 あくまで個人的な提案ですが、Web会議を行うとき、パソコンからの接続方法がわからない、パソコンを持っていないという方がいらっしゃれば、このような方には電話で参加していただくという方法も考えられます。

 例えば、議長がその方に電話をかけて、議長はスピーカーをオンにします。オンにすれば、Web会議に参加している方全員に音声が伝わります。また、Web会議の音声は、電話参加の方に常に聞こえるようにします。

 このようにすれば、Web会議ではあるものの、一部は電話を使って参加すれば、「適時的確な意見表明」が相互にできる環境になると思います。

 

 私は、2月頃の時点では、新型コロナウイルスは夏頃になれば消滅するのでは、と素人の観点で勝手に思っていたのですが、現状を見ると、どうもそうはいかないようです。

 今後1年ぐらいは、実際に集まることができない可能性も視野に入れて、Web会議等による理事会開催の方法も考えておくのがよいのではないかと思います。