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野村克也氏追悼ブログ~勝負に勝つための名言

公認会計士・税理士 森 智幸

1.はじめに

 令和2年2月11日、プロ野球の南海(現ソフトバンク)、ロッテ、西武で選手として活躍し、南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督も務めた野村克也氏が亡くなられました。

 どんな人だったかはともかく、野村氏の言葉は、私が勝負事を行うにあたって感銘を受けたものが多くあります。

 今回は、野村氏の名言とその説明を行いたいと思います。

2.「野村本」を多く持っている理由

野村克也氏の著書の写真
私が所有している野村克也氏の著書の数々

 私は「野村本」を10冊以上持っています。

 これはもちろん、私が野球好きということもありますが、もうひとつの理由があります。

 

 私の経歴欄をご覧になるとおわかりになると思いますが、私は平成19年(2007年)から平成23年(2011年)にかけて、アメリカ合衆国へ日系子会社の監査に行っていました。年3回ないし4回のペースで行っていたので、計15回ほど行ったでしょうか。

 春は2月か3月下旬に1回、秋は10月中旬から下旬に1回、そして12月決算だったので12月28日~31日にかけて実査・立会に行っていましたので、少なくとも必ず年3回は行っていました。年度によっては、もう1回という年もありました。

 余談ですが、トラブルにより12月31日に帰国する便に乗ることができず、2年連続で元旦に帰国したこともあります。

 

 アメリカ西海岸に行かれた方はおわかりだと思いますが、アメリカ西海岸から日本に帰る飛行機では、極力寝ないことが必要です。なぜかというと、日本に到着するときは午後5時~6時ごろなので、それまでに機内でぐっすりと眠ってしまうと、日本に帰ってきた日の夜に目がさえて眠れなくなってしまうからです。そのため、もし帰国便で熟睡してしまうと、日本に帰ってきたあとに時差ボケがなかなか消えないことになってしまいます。

 

 私は、帰国便は全て、サンフランシスコ国際空港(SFO)発、関西国際空港(KIX)着のユナイテッド航空に搭乗していたのですが、SFOとKIXまでの時間は概ね12時間です。

 この12時間を、極力寝ないで過ごすには、何かする必要があります。そこで、私は帰国用に「野村本」を購入し、帰国の便では読書をすることにしました。

 そのため、「野村本」を10冊以上持っているというわけです。

3.野村克也氏の名言集

 それでは、私が感銘を受けた名言を紹介します。

(1)「体力・気力・知力。プロは知力の勝負だ。」

 野村氏によると、勝負に必要なのは「体力・気力・知力」ということです。

 そのうち、「プロである以上、体力・気力は充実していて当然。プロは知力の勝負だ」ということでした。

 野村氏は「プロなのに気力を強調することは、プロとして恥ずかしい」とも言っています。これは、プロアマ問わず、日本の野球界に染み付いた「精神野球」が背景にあります。

 

 公認会計士試験や税理士試験などの難関試験が不合格だったとき、「絶対に合格しようという気持ちが足りなかった」という反省を述べる受験生がよくいます。

 それ自体は間違っていませんし、素晴らしいことだと思います。

 

 しかし、これは「気力」を強調しているにすぎません。厳しい言い方をすれば、合格しようという強い気持ちはあって当然です。言い方を変えると、その気持がなくてどうする、ということです。

 そのため、難関試験に望むには「知力の勝負」に出なければいけません。そのときに大事なのは「努力の方向性と方法論」です。

 そうしないと、誤った方法のまま、気力を強調して突き進み、余計に悪くなっていくということにもなりかねません。気力を強調するだけでは、その先に進まないのです。

 

 従って、難関試験を受験するにあたっては、絶対に気力の強調をしないこと。知力をフル回転した努力の方向性と方法論を常に念頭に置くことが必要です。

(2)「自分の限界を知れ」

 これは「諦めろ」ということではありません。

 「自分の限界を知ってからが本当の勝負だ。」ということです。

 

 ただし、自分の限界はそう簡単に知ることはできません。必死の努力をして、初めて見えてくるものなのです。

 しかし、多くの選手は、そこに行き着くまでに諦めてしまっているということです。

 なぜ、そうなってしまうのかというと野村氏によると「いわれなき自己限定」をしているからだといいます。そして、その背景にあるのは、低いレベルでの妥協と自己満足だといいます。

 

 結果が出ないと「自分の実力はこんなものだ」と努力を諦めてしまう人は多いと思います。これは自分に妥協してしまっているからです。そして、なぜそのような妥協をしてしまうのかというと、「そこそこやれているじゃないか」「自分はこんなに一生懸命頑張っているんだし」という自己満足をしてしまっているからです。

 そのため、満足→妥協→限定はタブーであり、絶対にこの悪循環に陥ってはいけません。

 

 従って、人生の勝負に勝つためには、必死の努力をして、まず自分の限界を知ることです。

 そして、自分の限界を知れば、あとは頭を使うしかないことに気づくはずだと野村氏は言います。すなわち「知力」の勝負です。

 これにより、自分の天性にプラスアルファした力が身につくことになります。

(3)「鈍感は最大の罪」

 野村氏は感性を磨くことも必要だといいます。

 感性が鈍っている、すなわち、鈍感だと自分が行っていることが間違っているということになかなか気づかなくなります。その結果、鈍感な人は、同じ誤りを2回、3回、人によっては4回も5回も繰り返します。

 

 一流という呼ばれる選手は感性が優れているといいます。

 実際、例えば、一流投手は試合の中で微調整してくることが多いです。試合が始まって投球が進むにつれて、「あれ、おかしいな。」といったことに感づき、試合の中で調整してきます。

 「おかしいな」というのは、例えば、自分の変化球の曲がり具合であったり、相手の投球の待ち方であったり、自分の想定とは違ったことが試合の中でおこったときの対処です。

 

 このような鋭い感性が欠けていると「努力の方向性と方法論」に悪影響が出ます。

 公認会計士試験や税理士試験などの難関試験でいうと、自分の勉強方法に微調整が必要なところがあるにもかかわらず、それに気づかず、突っ走ってしまうという状況です。やはり、自分の勉強方法でよい結果が出なければ、どこかがおかしいわけで、そこに早く気づく必要があります。そのため、感性を鋭くして、鈍感にならないようにする必要があります。

4.最後に

 今回は、野村克也氏の「名言」について書いてきました。

 毎回、サンフランシスコから帰る帰国便の中で、これらの本を読んで感銘を受けたことが思い出されます。

 自分の人生において、もっと早く知っておきたかったと思うこともたびたびです。

 これらの名言は、人生で勝負をかけるときに必要な心得です。今でもその考えは変わりません。

 最後になりましたが、ご冥福をお祈りします。