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郵便局関係者が切手を換金し着服(1)~内部統制の不備を推測すると・・・

1.概要

 本日(令和元年10月31日)の朝日新聞によると、郵便局の幹部職員が、料金別納の支払いで使用された切手を外部に持ち出し、金券ショップで換金していたということです。金額は計約5億4千万円ということです。

 

 別納料金では現金か切手で支払いますが、記事によると、このとき切手で支払われた場合、社内規定では、「窓口の郵便部で「使用済み」を示す消印を押したうえで、総務部で細断処分することになっていた」ということです。

 しかしながら、シート状になった切手が持ち込まれた場合、郵便部の担当者が「どうせ細断されるから」と考え、消印を押す手間を省いて総務部に回すことがあった。」ということです。

 このように、使用済みの消印が押印されていない切手シートを、一部の幹部職員が持ち出して、金券ショップで換金し、お金を着服していたそうです。

 

 今回は、この郵便局の不正に関して、内部統制の不備を推測してみたいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.内部統制の不備を推測してみると・・・

 情報は新聞記事だけなので、あくまで推測ですが、内部統制の不備を見ていきます。

 記事では、社内規定では、「窓口の郵便部で「使用済み」を示す消印を押したうえで、総務部で細断処分することになっていた」ということなので、内部統制のデザイン自体はあるようです。ただし、ここでダブルチェックの体制があったかどうかは記事では不明です。

 

 次に、「シート状になった切手が持ち込まれた場合、郵便部の担当者が「どうせ細断されるから」と考え、消印を押す手間を省いて総務部に回すことがあった。」ということなので、デザイン自体には大きな不備はないという前提で進めると、郵便部の担当者が、本来行うべき手続きを行わないで進めてしまったことから、運用上の不備があったとみることはできそうです。

  

 しかし、あくまで想像ですが、窓口の郵便部で使用済みの消印を押印したことを、上長が確かめるという手続きがあれば、今回のようなことが起きるリスクを低減できていたかもしれません。そのように考えると、内部統制のデザインの不備があったためとみることもできます。

3.内部統制の限界

 仮に、デザイン自体に問題がないとした場合、デザインされた内部統制が適切に運用されていなかったということになりますが、このようにデザイン自体があったとしても、内部統制の不備が生じることがあります。

 これは、内部統制に限界があることが原因です。

 

 ちなみに、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」Ⅰ3では、内部統制の限界として以下の4つが挙げられています。

 

(1) 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。

(2) 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。

(3) 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。 

(4) 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。 

 

 今回のケースを見てみると、郵便部の担当者が消印を押す手間を省いて総務部に回すことがあったということは、(1)に掲げられている、不注意により内部統制が有効に機能しないケースといえます。

 

 今回は以上です。

 続きは、その2で記載します。