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軽減税率の対象~消費者側の観点から

1.はじめに

 令和元年10月1日から軽減税率制度がスタートします。

 軽減税率制度がスタートという言い方をしましたが、具体的には消費税率が原則として10%になる一方で、食料品等一定の物品については消費税率が8%となるというものです。

 今回は、消費者側の観点、すなわちモノを購入する側の視点で、軽減税率制度について注意点を簡単にまとめてみます。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 

2.軽減税率の対象品目~飲食料品

 軽減税率の対象となるのは飲食料品と新聞です。まず、飲食料品から説明します。

 

(1)飲食料品とは

 消費税法に規定する飲食料品とは、原則として食品表示法に規定する食品を指します。すなわち「人の飲用又は食用に供されるもの」となります(国税庁資料より)。

 要するに、軽減税率の対象は「人が飲んだり食べたりすることができるもの」ということになります。

 従って、例えばペットフードは対象外となります。なぜなら、ペットフードは人が食べるものではないからです。

 その他、熱帯魚、生きた家畜(牛、豚など)、家畜の飼料、観賞用植物も対象外です。理由は同様に、人が食べるものではないからです。

 

(2)適用税率の判定時期

 注意点は、軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が飲食料品を販売する時点(取引を行う時点)で行うという点です。従って、販売する事業者が、顧客に引き渡す時点で飲食料品を販売していれば、その後、顧客が別の用途に使用したとしても、軽減税率が適用されるということです(消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例 編)(以下「個別Q&A])問1など参照)。

 

(3)飲食料品の対象とならないもの

 飲食料品の対象とならないもの、すなわち軽減税率の対象とならないものは、以下のものです。

 

 ①酒類(酒税法に規定する酒類)

 ②外食

 ③ケータリング

 ④医薬品・医薬部外品

 

 しかしながら、一部に例外ないし注意点があります。

 

(イ)酒類について

 まず、「酒類」ですが、正確にはカッコ書きで記載したように「酒税法に規定する酒類」が軽減税率の対象外となります。

 具体的には酒類についてはアルコール度数で判定します。酒税法では「アルコール度数1%以上の飲料」を「酒類」と規定しています(酒税法2条①)。従って、アルコール度数1%未満のものは酒税法に規定する酒類に該当しないので、軽減税率の対象となります(個別Q&A問12)。 

 以下、個別事例について見てみます。

  • 食品の原材料となるワイン→酒税法に規定する酒類なので軽減税率の対象外
  • みりん→酒税法に規定する酒類なので軽減税率対象外
  • 料理酒などの発酵調味料、みりん風調味料→軽減税率の対象
  • ノンアルコールビール→軽減税率の対象
  • 甘酒(アルコール度数1%未満のもの)→軽減税率の対象

(ロ)外食

 外食については別途記載します。

 

(ハ)ケータリング

 軽減税率の適用対象となる「飲食料品の譲渡」には、「相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供」(ケータリング、出張料理)は含まれないとされています。(個別Q&A問75)。

 しかしながら、一定の基準を満たす、有料老人ホームで行う飲食料品の提供、学校給食などは軽減税率の対象となります。

 一定の基準とは「同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額(税抜き)が1食につき640円以下で、その累計額が1,920円に達するまでの飲食料品の提供とされています(個別Q&A問75)

 一方、学生食堂や社員食堂は軽減税率の対象外となります。

 

(ニ)医薬品・医薬部外品

 栄養ドリンクについては医薬品・医薬部外品かそれ以外のものかで異なります。

 従って、例えば、リポビタンDとオロナミンCとでは以下の違いが出てきます。

 

  • リポビタンD→医薬部外品なので軽減税率の対象外
  • オロナミンC→食料品なので軽減税率の対象

 その他、医薬品類の栄養ドリンク剤としては、例えば、養命酒、ユンケル黄帝液、チョコラBB、チオビタゴールド、エスカップは医薬品ないし医薬部外品に該当するので、軽減税率の対象外となります。すなわち、消費税率は10%となります。

 

3.外食について

 軽減税率の対象とならない外食とは、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)(以下「制度Q&A))の問7によれば、

 「①飲食店業等を営む者が テーブル、椅子 、カウンターその他の飲食に用いられる設備(以下「飲食設備」といいます。)のある場所において、

 ②飲食料品を飲食させる役務の提供

をいい、例えば、レストランやフードコートでの食事の提供があります。」

 

 とされています。

 この外食については、テイクアウトか店内飲食かで軽減税率の対象となるかどうかが変わってきます。

 この論点については、以前「軽減税率のポイント(1)」「軽減税率のポイント(2)」で記載しましたが、事業者が課税資産の譲渡等を行う時に判定します。これは上記2(2)でも記載したとおりです。

 そのため、消費者としては、店頭で購入するときに持ち帰るのか、店内で飲食するのかの意思表示をした時点で軽減税率が適用されるのか、標準税率が適用されるのかが決定されます。これは、その後変更されることは絶対にありません。

 従って、例えば、スターバックスで店内で飲食するつもりでコーヒー等を購入したものの、席が満席だったため、店内で飲食することをあきらめて持ち帰りにすると変更した場合であっても消費税率は10%の適用となります。これは、課税資産の譲渡等を行うときには、店内で飲食するという意思表示をしたためです。そのため、この場合、返金されることはありません。

 軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者が飲食料品を販売する時点(取引を行う時点)で行うため、注意が必要です。