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事業計画書等の提出期限|公益法人

公認会計士・税理士 森 智幸

KEY POINTS

  • 事業計画書等は、事業年度開始の日の前日までに行政庁に提出しなければならない。3月決算の法人の場合は3月31日、12月決算の法人の場合は12月31日が提出期限日である。
  • 事業計画書等の提出においては、理事会議事録(社員総会又は評議員会の承認を受ける場合は社員総会又は評議員会議事録)を添付して提出しなければならない。
  • 理事会議事録、社員総会又は評議員会議事録の署名又は記名押印が間に合わない場合は、いったん事業計画書等を提出期限日までに提出し、その後、行政庁に補正を依頼し、議事録を添付して補正による提出という形で対応すればよい。

1.はじめに

 公益社団法人または公益財団法人(以下「公益法人」)は、毎期、行政庁に対して事業計画書、収支予算書、資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類(以下「事業計画書等」)および理事会議事録(社員総会又は評議員会の承認を受けた場合は、社員総会又は評議員会の議事録)を提出する必要があります。

 今回は、この事業計画書等の提出期限についての留意点について説明します。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 

2.事業計画書等の提出期限

 事業計画書等の提出は、毎事業年度開始の日の前日までとされています(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)22条1項)。

 

 公益法人は3月決算の法人が多いですが、3月決算の法人の場合は、事業年度の開始の日は4月1日ですから、その前日の3月31日が事業計画書等の提出期限となります。

 この提出期限までに、事業計画書等を行政庁に提出しないと、認定法に違反することになります。

 

3.議事録の署名等が間に合わない場合

(1)署名等が間に合わないケース

 この事業計画書等の提出においては、理事会(社員総会又は評議員会の承認を受けた場合にあっては、当該社員総会又は評議員会)の承認を受けたことを証する書類も併せて添付して提出することとなっています(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下「認定法施行規則」)37条)。

 

 「理事会(社員総会又は評議員会の承認を受けた場合にあっては、当該社員総会又は評議員会)の承認を受けたことを証する書類」とは、業計画書等の承認を行った理事会、社員総会又は評議員会の議事録のことです。

 多くの公益法人は理事会のみの承認が多いと思いますが、定款で社員総会又は評議員会の承認も必要としている法人もあります。以下は、理事会決議のみの法人について説明します。

 

 この議事録ですが、事業計画書等の承認を行う理事会は、決算月の中旬から下旬に行われることが多く、特に下旬に行われる場合、実務では、議事録の作成が間に合わないケースが見られます。

 

 理事会議事録の作成が間に合わないケースのうち、よく見られるのは、理事及び監事の署名又は記名押印が提出期限までに間に合わないというケースです。

 

 理事会議事録の署名又は記名押印を行うのは、原則は①出席した理事及び監事です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)95条3項)。一方、②定款で定めることで出席した理事に代わって代表理事とすることもできます(一般法95条3項かっこ書き)。

 

 実務では、②の容認法を適用している法人が多いですが、①の原則法を適用している法人も見られます。

 この①の原則法を適用している法人の場合、理事及び監事の数が多いと、署名又は記名押印が事業計画書等の提出期限日までに間に合わないことが多いです。

 また、②の容認法を適用している法人であっても、代表理事が欠席した場合は、原則に戻り、出席した理事及び監事の署名又は記名押印が必要となりますので、この場合も間に合わない可能性が高くなります。

 もちろん、②の容認法の場合でも、スケジュールの都合などで代表理事及び監事の署名又は記名押印が間に合わない場合もあります。 

 

(2)間に合わなければいったん提出し、補正で対応

 このように、理事会議事録の署名又は記名押印が提出期限までに間に合わなかった場合は、いったん、提出期限までに行政庁に事業計画書等を提出するようにしてください。このようにすれば、認定法22条1項に違反しないことになります。

 その後、理事及び監事の署名又は記名押印がそろったら、行政庁に補正を行っていただくよう依頼し、その後、理事会議事録を添付し補正による提出を行います。

 なお、行政庁によっては、理事会議事録をメールで送っても可、というところもありました。この場合、メールで送った後、行政庁の担当者が職権で差し替えをしてくれました。

 

 一方、理事及び監事の署名又は記名押印を待って、提出期限を過ぎて事業計画書等を提出すると、認定法22条1項に違反することになってしまいます。

 したがって、まず事業計画書等は提出期限日までに提出することが必要です。

 

4.おわりに

 今回は事業計画書等の提出期限について、実務上の対応を書いてみました。

 事業計画書等は、認定法に定められた提出期限までに提出することが必要です。

 今回のブログが実務の参考となりましたら幸いです。 

 

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

令和元年に独立開業。株式会社等のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

PwCあらた有限責任監査法人ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部では、内部統制や内部監査に関するアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、海外子会社のJ-SOX支援、内部監査のコソーシング、内部統制構築支援、公益法人コンサルティングなどに携わる。執筆及びセミナーも多数。


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