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巨人がDXプロジェクトを公表

公認会計士・税理士 森 智幸

KEY POINTS

  • 巨人はデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトを始めることを発表した。
  • DXプロジェクトでは、顔認証入場システムなどの新技術の導入が進められる予定である。
  • 巨人は2019年にPwCコンサルティング合同会社とデジタルトランスフォーメーションに関するアドバイザリー契約を締結し、デジタルトランスフォーメーションを進めてきた。
  • 巨人と東京ドームは他球団・他球場と比べてデジタル化が遅れていたが、一気に遅れを取り戻したといえる。

1.はじめに

 プロ野球・読売巨人軍は2021年3月2日付で「ジャイアンツ×東京ドーム デジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクト」を始めることを公表しました。

 このプロジェクトでは、顔認証入場、入場口の自動ゲート化、電子チケット、売店の完全キャッシュレス、モバイルオーダー、スタジアムWi-Fiといった新技術の導入が進められるということです。

 顔認証による入場システムについては、2021年は技術実証を行うということです。従って、2021年は顔認証による入場システムの全面的な導入は行われませんが、早ければ来年からは導入されるかもしれません。

 このシステムは、チケットの転売防止、過去にトラブルを起こした観客の入場防止などにも役立つことが期待されます。

2.DX推進は2019年から

東京ドーム
東京ドーム(筆者撮影)

 旧ブログでも紹介しましたが、2019年5月に巨人はPwCコンサルティング合同会社とデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するアドバイザリー契約を締結しています。

 

 当時、巨人とPwCが発表したサイトは以下の通りです。

 

 このように巨人は2019年からデジタルトランスフォーメーションの推進に取り組んできました。

 当時のPwCのサイトでは「今後、来場者が体験したことのないような、革新的でクリエイティブなサービスを協働で創り上げていきます。」ということでした。

3.遅れていた巨人と東京ドーム


 2019年5月当時は、すでに福岡ソフトバンクAIチケットを、東北楽天が球場内の完全キャッシュレスを導入していました。

 

 一方、巨人と東京ドームは、デジタル化が遅れていたといえます。そのため、巨人がPwCコンサルティングとアドバイザリー契約を締結して、東京ドームのデジタル化を進めたものと思われます。

 なお、東京ドームは巨人の所有ではなく、巨人が賃借料を払って借りる立場にあります。そのため、巨人が東京ドームの設備や仕組みに直接手を加えることはできない関係にありますが、デジタル化の遅れは、今後、観客動員の面で大きなマイナスとなりますので、東京ドームと協力する形でデジタルトランスフォーメーションを進めたのではないかと思います。

 

 一方、東京ドームは香港の投資ファンドとの対立が続いていましたが、三井不動産によるTOBにより、最終的に東京ドームの株式は三井不動産と読売新聞が所有することになりました。読売新聞が東京ドームの株式を所有することから、巨人のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトも進めやすくなるものと予測されます。

 

 今回のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトにより、遅れていた東京ドームのデジタル化が一気に進み、東京ドームは国内最先端のデジタル技術を持つ野球場になったのではないかと思います。

 

 現代においては、あらゆる分野でデジタル化が進んでいます。

 「業務が順調に進んでいるから、あえて投資をして変革する必要はないだろう」と思っていると、デジタル化を積極的に進めた会社とは、気づいたら大きな差がついてしまうことにもなりかねません。

 従って、常に最新のデジタル技術、最新のテクノロジーを理解していくことが必要といえます。

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

 令和元年に独立開業。株式会社や公益法人のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

 PwCあらた有限責任監査法人リスク・デジタル・アシュアランス部門ではアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

 これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、公益法人コンサルティング、J-SOX支援、内部統制構築支援、社会福祉法人監査などに携わる。執筆及びセミナーも多数。