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働き方改革と経理業務の効率化(3)~決算書の作成プロセスその2

公認会計士・税理士 森 智幸

1.表示の組み換え

 今回は、前回の「働き方改革と経理業務効率化(2)~決算書の作成プロセス」の続きになります。

 前回は、決算書は会計ソフトから直接作成することをおすすめしました。

 しかしながら、これまでエクセルで表示の組み換えをされてきた方の中には、「試算表の科目をそのまま貸借対照表に使用してよいのか?」という疑問をお持ちの方も多いと思います。

 そこで、今回は、会計ソフトで行う表示の組み換えについて説明します。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 

2.会計ソフトの科目集約機能を使用する

 会計ソフトで行う表示の組み換えといっても、それほど難しいことはなく、実は、一般的に決算書作成機能がついている会計ソフトであれば、科目の集約機能がついています。

 

 例えば、弥生会計であれば、科目の集計先の決定として「決算項目」の中の「決算書項目」という機能で、試算表の科目を決算書のどの科目に集約するのかを決定することができます。(「科目の集計先の設定 」参照)。

 

 また、PCA会計でも「集約設定」という機能がついています。

 

 このように、会計ソフトには、表示の組み換え機能がついていますので、この機能を使用して科目の集約をしていけば大丈夫です。

3.補助科目を使用した効率化

 試算表は外部に公表するものではないので、勘定科目はその企業等が自由に設定してよいですが、中小企業や非営利法人の中には主科目を細かく多数設定してしまっているところが見受けられます。

 具体例をあげると、普通預金の主科目を、金融機関別に多数作っているようなケースです。

 左の図の例では、普通預金はA銀行、B銀行、C信用金庫、D信用金庫の3種類について主科目を作成しています。

 定期預金もA銀行、C銀行の2種類を作成しています。

 そうなると、計6つの主科目が作成されていることがわかります。

 

 しかしながら、このように主科目を金融機関ごとに作成していては、試算表の科目数が多くなってしまい、見にくくなってしまいます。

 

 

 

 また、新しい口座を開設すると、さらに主科目が増えてしまいます。

 

 そこで、このような場合は補助科目を使用することをおすすめします。補助科目を使用すれば、主科目の数は少なくなります。

 上図では、補助科目を使用することで、主科目は普通預金と定期預金の2つになりました。

 

 さらに、補助科目にまとめることで、補助科目残高を作成することもできます。

 預金勘定であれば、預金の種類ごとに各金融機関の残高を補助科目残高表で示すことができるので、口座別明細表として使用することができます。

 

 また、2で示した表示の組み換え設定のときも、主科目の数が少ないほうが設定作業が便利です。

 主科目で分けていると、例えば、上記のように新しい口座を開設したときに、追加で組み換え設定もしなければいけないので手間がかかってしまいます。

 

4.補助科目を活用しましょう

 このように、補助科目は、経理業務の効率化を達成することができるため、非常に便利な科目です。

 しかしながら、補助科目を活用していない中小企業、非営利法人はよく見られます。この原因の多くは、経理担当者が補助科目を存在を知らないためです。

 従って、このような場合は、顧問の会計事務所が補助科目の使用方法を指導するとよいと思います。

 

 今回は以上です。

 

 参考としていただけますと幸いです。

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