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指導監査結果に対する対応策(1)~評議員会運営

1.大阪府の指導監査結果

 社会福祉法人は所轄庁による指導監査が行われます。その指導監査の結果も各所轄庁(具体的には都道府県や市区町村)のHPに掲載されています。

 今回は、大阪府の平成30年度の社会福祉法人の指導監査結果を例に、法人運営に係る主な指摘事項と今後の対応策について見ていきたいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 社会福祉法人は所轄庁による指導監査が行われます。その指導監査の結果も各所轄庁(具体的には都道府県や市区町村)のHPに掲載されています。

 今回は、大阪府の平成30年度の社会福祉法人の指導監査結果を例に、法人運営に係る主な指摘事項と今後の対応策について見ていきたいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.法人運営に係る指摘事項

 法人運営にかかる指摘事項見てみますと、ほぼ事前に予想されたものが指摘されているという感じがします。

 なぜ、事前に予想することができたのかというと、実は、公益法人においても行政庁による立入検査が概ね3年に1回(行政庁によっては4年に1回)行われており、そこでも機関運営に関する指摘事項が色々と出ているからです。

 平成29年度から開始された社会福祉法人改革は、先に行われた公益法人改革を参考にしています。そのため、社会福祉法人の機関構成、機関運営方法は公益法人とほぼ同様です。

 法人運営においては、誰もが誤りやすい論点やうっかり見過ごしてしまいやすい論点はほぼ決まっています。従って、社会福祉法人においても、事前に予想された指摘が多く出ています。

 本ブログでも、社会福祉法人の法人運営については注意点を色々と記載してまいりましたが、これも公益法人における立入検査の指摘事項を知っていたためです。

3.評議員会の運営について~大阪府の指摘事項

 今回は、評議員会の運営についてみてみます。

 大阪府の文書では以下のように記載されています。

 

 評議員の選任、評議員会の招集・運営、評議員会決議、議事録の作成について

(法第39条、第40条、第45条の9第1項、第8項、第10項、第45条の11)

 ・評議員候補者が欠格事由に該当しないことについて、選任時に確認すること。

 ・決議に特別の利害関係を有する評議員がいるかを確認していないので確認すること。

 ・評議員会の日時、場所及び議題については、理事会の決議により定めること。

 ・評議員会の議事録に、出席した理事及び監事の氏名、及び議事録の作成に係る職務を行った者を

  記載すること。

 

 以下、大阪府の指摘事項に触れつつ、今後の改善策や対応策について記載してみたいと思います。

4.欠格事由

 評議員候補者が欠格事由に該当しないことについて、選任時に確認すること。」

 

 欠格事由については、公益法人向けのブログ「公益認定一発取消しの危険性~公益法人」で記載したことがあります。

 このときのブログを引用しながら、今後の対応策について記載いたします。 

 

(1)履歴書と欠格事由確認書

 評議員に限らず、理事、監事については候補者から就任承諾書の他、履歴書欠格事由確認書を提出して頂く必要があります。従って、まずは書類を完全にそろえることが重要です。

 なお、就任承諾書、履歴書、欠格事由確認書については、例えば埼玉県久喜市のページにワードによるひな形が掲載されていますので、このような様式を使用すればよいでしょう。

 

 このときの注意点として、当時のブログでは「全員から提出していただくのは当然として、形式的にならないようにする必要があります。」と記載しました。

 理由としては、「特に、確認書については、よく読まないで署名押印する人がかなりいると推測され」るためです。

 従って、公益法人と同じく、社会福祉法人の事務局担当者は、必ず口頭で、上記条文の内容を説明することが有効と考えられます。特に、新しく理事、監事、評議員に就任される人に対しては、十分な口頭説明と確認書の熟読の要請が必要です。

 
 (2)重任時にも必ず入手
  また、その他の注意点については、履歴書と欠格事由確認書は、重任する時も必ず入手するという点です。
  「前回、頂いたので、何度も同じ書類を提出していただくのは何なので・・・」と入手を躊躇される社会福祉法人の方もいらっしゃるかもしれませんが、必ず、提出して頂く必要があります。また、理事、監事、評議員の候補者の中には「前回、提出したではないか」と言う人もいるかもしれませんので、選任決議後に何も説明せずに郵送で送りつけるのではなく、選任決議が行われる前に、例えば、決算承認理事会などの場で、事前に説明しておくとよいと思います。

5.特別の利害関係

 「決議に特別の利害関係を有する評議員がいるかを確認していないので確認すること。」

 

 特別の利害関係については、社会福祉法人の理事についてのブログ「社会福祉法人における利益相反取引の留意点」において記載したことがあります。

 理事については、社会福祉法人のために忠実にその職務を行う必要があるために特別の利害関係に関する規定が設けられていますが、評議員会についても同様の規定が設けられています(社会福祉法(以下「法」)45条の9第8項)。評議員も理事、監事と同様、社会福祉法人とは委任に関する規定に従うため(法38条)、特別の利害関係があると法人のために決議を行うことが期待できないためです。

 

 この特別の利害関係関係に関する確認作業ですが、具体例が堺市のホームページ内の資料に記載されていたので、引用します(「社会福祉法改正後の指導監査に係る説明会」の「平成29年度 堺市社会法人指導監査結果(2)」です。)。

 

1 評議員会の場で確認し、議事録に記載

2 評議員会の招集通知と併せて、当該評議員会の議案について特別の利害関係がある場合は法人に申し出ることを定めた通知を発出

3 評議員の職務の執行に関する法人の規程で、評議員が評議員会の決議事項を特別の利害関係を有する場合には届け出なければならないと規定(個別の議案の議決で改めて確認や特別の利害関係がない場合議事録の記載も不要)

  (以上、堺市の資料より引用)

 

 堺市のページにはこれらを行うための様式もありますので、利用されるとよいのではないかと思います。

 

 なお、評議員会のときには、実務上は、このような評議員はいったん退出していただいて決議を行うのがよいでしょう。

 また、特別の利害関係を有する評議員がいるときは議事録に当該評議員の氏名を記載する必要があります(社会福祉法施行規則(以下「施行規則」)2条の15③三)。

6.評議員会の日時、場所及び議題については、理事会の決議により定めること。

 これは招集の決定に関する指摘であり、この点は「定時評議員会招集に関する留意点~社会福祉法人」でも記載いたしました。

 このときの文章を引用します。

 

 「この定時評議員会を招集するには、理事会評議員会の日時及び場所、議題、議案決議することが必要となります(法45条の9⑩、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」)181①)。

 これは決議事項となりますのでご留意ください。」

 

 対応策としては、年間の理事会スケジュールで、評議員会の招集の決定を行う理事会の開催月ないし開催時期をあらかじめ決めておき、その理事会では必ず翌年の6月の評議員会の開催日を決議事項とするというルールにしておくことが考えられます。 

7.評議員会議事録の記載事項

 評議員会の議事録に、出席した理事及び監事の氏名、及び議事録の作成に係る職務を行った者を記載すること。」

 

 こちらに関しては、特に議事録作成者の記載漏れの指摘が公益法人でも多かったため、拙著「「社会福祉充実計画」の作成ガイド」(中央経済社)P115でも指摘してきたところです。

 これは施行規則2条の15③七に規定されているため、法令に基づく要記載事項となります。

 また、出席した理事及び監事の氏名についても、施行規則2条の15③五において記載が必要である旨が定められています。

 

 この指摘事項に対する対応策としては、各所轄庁が出している評議員会議事録のひな形(モデル議事録)を使用するのがよいと思います。

 所轄庁が作成したひな形であれば、法令で要求される事項は網羅的に記載されていますので、そのまま使用すれば、このような記載漏れのリスクは小さくなります。

 

8.最後に

 今回は、社会福祉法人の評議員会の運営について、大阪府の指摘事項を用いて、その対応策について記載してみました。

 参考としていただけますと幸いです。